みとのひとりごと

40代独身、人生散歩中。

うさんくさいけど、とても優しい。

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 「ひとつ屋根の下」のドラマを観た。それこそオンタイムで放送していたぶりに観たかもしれない。Dテレビで無料でやっていたから。1作目の方だ。観ながらなんだか、泣きそうになったよ。うさんくさいけど、とても優しいから。

 1993年の作品だから、今からもう23年前になるのか。時代はもう平成だったけど、まだなんとなく昭和の匂いが残っていた時代だったんだろうね。江口洋介福山雅治は20代半ばで、酒井法子は20代前半、いしだ壱成はまだ18、9歳で、山本耕史はまだ15、6歳だったんじゃないかな。まだ携帯の普及していなかった時代で、黒電話すらそんなに珍しくなかったんだよな。さすがに、5人兄弟がひとつ屋根の下に住んでいる家庭は少なかったけど、近所にも大家族がいたしね。ドラマの設定は、当時でも少し日常とはかけ離れていたけど、それでも当時は「ありそうでなさそうな」感じで、違和感なく、観れたんだろうな。ちなみに舞台ば高円寺だったんだね。当時は全然意識してなかったわ。

 あんちゃん(江口)は家族、周辺の人たちにおせっかいばかりやいて、空回りしているけど、それがとても優しくて、羨ましかったな。和也(いしだ)も、なんかザ・青春の苦悩みたいな感じで、当時高校生だった自分も、けっこう共感したな。いまいち当時からちーにいちゃん(福山)には、共感がわかなかったけど、おじさん(当時50代後半だった山本圭)の演技もなんか心に残ったな。それから何作から、1960年代の山本圭出演の作品観たりしたな。吉永さゆりと恋人役だった「人間と条件」とか、なかなかよかったし。小梅(大路恵美)のレイプシーンも、当時はほんとうに悲しかったよ。

 話がすこしそれてしまったけど、この作品の中にある優しさは、もう今の時代には手が届かないのだろうな。そう強く感じている。人との接し方が変わってしまったからね。いつまでも手の届く場所にあると思っていたものが、いつのまにか全然遠いものになっていた。そんな心境かな。でも23年って思っているより、長い年月なのだろう。

 当時の優しさは、言うなれば半径1キロの優しさで、自分の生活の中にいる人への優しさだった。でも今の優しさは少し違うんだろうね。不自然というか、無機質というか。東日本大震災熊本地震へのボランティア、遠く離れたアフリカや東南アジアの子供たちへの支援など、優しさはいまだに世の中には溢れているのだけど、なんだか無機質な感じがするんだ。東日本大震災のボランティアには行くけど、近所のおばちゃんには挨拶ひとつしない。カンボジアの子供支援のワークショップには行くけど、近所で困っているおばあちゃんには手を差し伸べない。そんな感じなのかな。

 グローバル化は大変だ。身近なことさえ十分でないのに、いつのまに世界が身近な気がしていて。やることが沢山で、ちぐはぐで。少し違う気がしてるんだ。

 「ひとつ屋根の下」の時代の頃は、今思うとひとつの分岐点だったんだろうな。うさんくさい優しさが、今ほどに不自然さを感じない、そんな時代の最後だったのかな。そんな単純なやさしさがすごく懐かしくて、羨ましい。さて、どうしたもんだろうね。