みとのひとりごと

40代独身、人生散歩中。

エレファントカーブと私。

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  アメリカの経済学者のブランコ・ミラノビッチが著書「大不平等」の中で提唱したエレファントカーブという指標がある。1988年~2008年の20年間で、世界各国の国民一人の所得の伸び率をグラフ化したものだ。そのグラフによると、その20年間でアフリカなどの最貧国はほとんど成長していないが、その一方で中国、東南アジアをはじめとする新興国の中間層の所得は70%前後伸びている。グローバル化の波に乗り、中国をはじめとする新興国が世界の工場となり、低コスト(従業員の低給料)を武器に、先進国の製造現場を根こそぎ奪ったことで、新興国の所得は大きく伸びた。その反動を受け、その当時の世界の中間層の所得は、その20年間でほとんど伸びいないことが、このグラフから読み取れる。日本のサラリーマンはまさにこの世界の中間層であり、日本が我が世の春を謳歌したバブルからの衰退の原因も、このグラフが端的に示している。アメリカ、ヨーロッパも日本よりは成長しているが、その国に中間層に焦点を当てると日本以上に暮らしは厳しく、それがトランプ現象やBREXITも生んだ。

 しかし世界の上位75%~80%前後の所得のほぼ成長なしを境に、グラフは象の鼻のように一転して成長を遂げており、世界の上位1%の富裕層のこの20年の成長率は新興国の高成長率とほぼ同じとなる。そしてそれを金額ベースの増加にすると、富裕層の資産増加ぶりは圧倒的だ。このグラフの結果に衝撃を感じる人も少なくないが、この結果はとても当たり前だ。それまでの先進国の中間層が、地政学的にたまたま獲得してきた優位性が、グローバル化の波に乗り、薄まっただけに過ぎない。そういえば、トーマス・フリードマンの「フラット化する世界」を10年ちょい前に読んで衝撃を受けたが、そこに書かれていた現実は今ではかわいい昔話にさえ思えてしまう。

 エレファントカーブの先には何が待っているのだろうか。多くの自称有識者がAI、ロボット化を大声で叫び、エレファントカーブを肯定する。それはその人たちがカーブの上位に入り込む自信を持っているからだろう。そのポジショントークスタンスはある程度は理解できる。その中で一般人である僕らのできることは、世界の株式を買い集め、末端の資本家に名を連ねることぐらいしか思いつかない。エレファントカーブの先に何が待っているのかは想像できない。それは結局は今の格差の延長線上なのか、それともオーウェンの1985的なディストピアなのか、もちろん分からない。資本主義は前に進んでいく。何が起こっても、それでも進んでいく。