みとのひとりごと

40代独身、人生散歩中。

テレビが輝いていた時代もあったんだよね。

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 戸部田誠(テレビのスキマ)氏の「1989年のテレビっ子」を、遅ればせながら読んだ。単純に、その心からの無償のテレビ愛に感服した。テレビを視聴するという体験もここまで昇華させれば、それはとても大きなものになるんだな。そう思った。

 

 同著の最初にこんなフレーズがあった。「部屋で座ってテレビを観る。それが僕の青春だった」―。なんかこの言葉が、しっくり心にしみ込んだ。青春という言葉を聞くと、人はそれをスポーツだとか、恋愛だとか、葛藤だとか、自分探しだとかに結びつけるんだけど、そうじゃない人間の方が、多数派なのかもしれない。そんな青春もあっていいんだ。

 一読してもらえば感じる人は多いと思うんだけど、戸部田氏のテレビ(お笑い、バラエティ)に対する愛は半端じゃない。取材を一切せず、当時のテレビ番組と雑誌と、同氏の記憶を中心に、1960年代後半から~90年代前半のテレビ界を考察したルポライターとしての能力は秀逸だわ。同世代ということもあるけど、当時のバラエティをを取り巻く熱気を思いを起こさせてくれて、何かとてもすがすがしい気分になった。

 僕も80年代の小学校時代はドリフと加ケンを愛し(あまりひょうきん族は観なかった)、90年代を過ごした中学、高校時代はとんねるずとうっちゃんなんちゃん、そしてダウンタウンに感化された(個人的にはうっちゃんなんちゃん派よりだった)。もちろん僕だけでなく、パソコンもスマホもなく、ユーチューブもソーシャルゲームもない当時の多くの少年たちは、みんな彼らに夢中だった。当時の気持ちをなんとなく思い返し、少しほっこりした。そうなんだ、この頃は本当にテレビが生活の主役だったんだ。

  テレビ離れが叫ばれて久しいけど、いつからテレビはこんなにも寂しいものになったんだろう。僕が屁理屈家の大人になったからかもしれないけれど、本当に今のお笑い、バラエティは笑えない。そこにある計算と打算、自主規制、守りの姿勢がとても痛々しいし。まだ90年代後半まではテレビも勢いが強く、2000年代前半まではその残滓が残っていたかのようにも思う。でもそれもいつしか崩れ、そして僕はいつからお笑い、バラエティを観なくなった。多くのマーケティングでは、メディアミックスという言葉が踊るようになり、テレビを使ったマス向けのイメージ戦略は、ウェブ、SNSなんかと等価な、格段大きな武器ではない広告媒体の一環でしかなくなった。

 時代は流れる。当たり前だけど。何事にも賞味期限はある。テレビの賞味期限はいつになるのだろう。もしくはすでに賞味期限はきれているが、とりあえずまだ味わうことができる消費期限が残っているだけか。寂しいけど、仕方ないことなのだろう。