新しい時代の形は見えてこないのだけど、確実の今までのグローバル化を最優先にした時代の形態は終わったんだろうな。英国のEU離脱のニュースを聞き、実生活でも若干影響を受けながら、そんなことを考えていた。
アメリカとロシアの冷戦が終わり、世界が経済を中心に回る本格的なグローバル化の時代に入ってから、考えてみればまだ20年と少ししか立っていない。資本主義陣営対社会主義陣営の、「人類の幸福を最大化するのはどちらなのか」という壮大な社会実験のもと、第2次世界大戦後の世界のルールは、資本主義陣営の勝利に終わり、統一された。
資本主義も社会主義も、そのそもそもの理想は人の幸福の最大化であるのだが、そのアプローチは根本的に違う。社会主義の理想は、全ての人が等しく幸福の総量を分け合って、互いに幸せに暮らすための仕組みであり、その背景となる社会システムは、皆が平等に仕事し、平等に幸せと受け取るということだった
一方で資本主義は、個人の能力に応じて、幸福量を分け与える仕組みだ。人は平等だが、それは能力のもとに平等であり、能力が低い人間は能力に合わせた幸福しか受け取れない。だが努力を重ね能力を伸ばせば、それに合わせて得られる幸福量も増えることになる。
資本主義と社会主義のどちらが理想的なのかは、米ソの壮大な社会実験により、現状は資本主義に軍配があがっている。だが本当にそうなのだろうか。
個人的には、資本主義が大勝した背景は、時代が味方した部分がかなり多いと思っている。第2次大戦後はどの国も、完全に労働人口=購買者人口が多い成長市場であり、成長市場においては、努力は報われることが圧倒的だろう。戦後に資本主義で成長してきた国々は圧倒的にその果実をうまく食べることに成功してきたと言える。少々の不公平感はあったとしても、例えば年間20%所得が成長する国において、平均より少ない10%しか給料が伸びない人がいても、50%伸びる人を羨ましくは思うだろうが、「まぁあいつの方が努力しているし」と納得することも多いだろう。こうした社会が国にもよるが、日本ではバブル崩壊後の90年代前半まで、欧州でも90年代までは続いていたといえる。文化大革命を経験した中国、ベトナム戦争を経験したベトナム、東南アジアなどはそれが30~40年遅れてきた計算になり、今が資本主義が受け入れられている土最適なを形成している。
話が少しとんでしまったが、グローバリズムと資本主義は分けては考えられないものだ。資本主義は延々の資本成長を目指す行動であり、資本成長のためには成長のための土壌(市場)が必要だからだ。それがグローバル化であり、他国への進出だ。
当たり前だが、グローバル化は当初は確実に上手くいく。なぜならそれは進出国にまずが雇用をもたらすからだ。さらにその雇用の賃金は、進出先として選ぶ他国は経済的に格差がある場合が多く、恵まれている場合も多い。だがこの初期メリットは、徐々に効果を失い、1世代が経過した20~30年ではマイナスにすら転じる。
英国がEUを離脱した大きな理由に移民があげられると言われる。移民により仕事を奪われた底辺労働者の怒り、破滅意識が、冷静に状況を判断していると思い込んでいる上流層を、新たな局面に巻き込んだということだろうか。さらに移民とは本当に諸刃の剣で、1世代目は社会保障も少ない低賃金労働者として活用できることで、企業(特にサービス業などの単純作業)はメリットを享受するが、それは長くは続かない。社会不安と社会保障費の増加に結び付くことになる。
英国のEU離脱は決まったばかりで、着地点まだ見えていない。そしてそれは世界の中でどういう位置づけとされるのかも、不透明だ。それでも「何かが変わる」という意識だけは、僕も含め、多くの人が鮮明に感じ始めたことだけは確かだろう。