みとのひとりごと

40代独身、人生散歩中。

「 おかえりモネ」には「ドジっ子感」が足りない。

 

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  NHKの朝ドラ「おかえりモネ」が始まって既に中盤を超えているが、全く面白くないので、その理由をなんとなく考えてみた。基本NHKの朝ドラは、明治~昭和を舞台にヒロインの生涯を描いた「女の一代記」と、ヒロインの現在に向かっての成長を描く「現代モノ」(少女~40代くらいまでを演じる)に分類される。(*「女の一代記」も、江戸時代以前は大河ドラマの領域なので、一部幕末を除いて描かれない)。ちゃっと統計していないのでテキトーな感覚なのだが、歴代の朝ドラの構成比は、「女の一代記」が8~9割、残り1割強が「現代モノ」となる。一部おしんカーネーションのように、途中でヒロイン需要が変わるなど、「女の一代記」要素に「現代モノ」要素を加味している作品もあるが、これは「女の一代記」の一部だと考えている。

 これまでの朝ドラでは、「現代モノ」は作品数が少ないだけでなく、ヒット作品も少ない。それどころか低視聴率モノがかなり多い。2000年代の朝ドラの現代モノを振り返ってみても、ヒットしたのは「ちゅらさん」(2002年、国仲涼子)、「あまちゃん」(13年、能年玲奈)ぐらいだろう。これにまずまず及第点だったのが、「ひよっこ」(17年、有村架純)、「半分青い」(18年、永野芽以)あたりだろうか。

 一方で2000年代で他の朝ドラで特に大爆死した「現代モノ」の2代巨頭は、「純と愛」(12年、夏菜)「まれ」(14年、土屋太鳳)だが、この2作品に共通しているのが、視聴者を共感させる要素がただただ皆無だったことだろう。朝ドラは日本の全てのドラマ枠の中で一番広い層をターゲットにしている作品であるが、ただただ暗く登場人物の多くが不幸になるだけの「純と愛」。「まれ」にいたっては、職、生き方を転々としてまったく芯のない朝ドラ主人公、サイコパス過ぎる失踪おやじなど、登場人物の魅力のなさが、厳し数字と評価となった。なお「まれ」では主要若者キャラ4人に、高畑裕太清水富美加が参加しており、実際に俳優もサイコパスだったようだ;;唯一山崎賢人だけ、そこから成功へのレールにのったが;;

 一方「あまちゃん」をはじめ、「ちゅらさん」「ひよっこ」「半分青い」が現代モノながら成功した大きな要素は、ずばり、主人公のナチュラルな「ドジっ子感」だと確信している。不器用で田舎者、ぱっとしないヒロインが、自分のやりたい夢を探し、挫折を繰り返しながら、自分なりの幸せを手に入れる、まさに日本人の好きなヒロイン像。その幸せまでの過程、途中の山谷テイストも分かりやすく、視聴者に飽きさせないステージ、場面転換(登場人物転換)も行い、メリハリをつけて、約130話のドラマを作り上げたことが、これらの作品の成功裏だろう。「半分青い」はちょっとあてはまらない部分もあるが、「あまちゃん」「ちゅらさん」「ひよっこ」は、この王道的展開をうまく活用したのだろう。(あまちゃんは飛び道具も多かったが、トータルで振り返ると、とても朝ドラ的な作品構成だったように感じる)。「半分青い」などは、北川悦吏子の脚本はなかなかのクソだったのだが、永野芽以のドジっ子感(一部サイコパス感)演技の上手さで救われ、なんとか現在モノの失敗作にならなかったような気さえする。

 そして今放映中の「おかえりモネ」。低視聴率が騒がれるが、この理由は清原果那=モネの「ドジっ子感」が圧倒的に少なすぎることだろう。モネも、あまちゃんちゅらさんひよっこ同様に、主人公がうまく人生を生きれていない感はあったが、いかんせん暗すぎる。ドジっ子感の強いヒロインは人生のうまくできない部分、不合理性を笑い飛ばす爽快感が魅力的なのだが、モネにはその要素が全く感じられないのだ。これは脚本が悪いことが大きいが、清原果那という女優は、ドジっ子感を醸し出せる女優でもない。今までの作品でも「あさがきた」のフユ、精霊の守り人バルサの少女時代、透明なゆりかご、蛍草の主人公などでも、陰を横顔から感じさせる少女をとてもリアリティ深く演じていた。そしてモネもそれらと似ているキャラクターで、悩みをかなえる内気な主人公だ。言い方は悪いがモネの演技はとても陰キャ感が強く、朝から見ていてもやもやして、つらくなる。もし対照的な陽な登場人物がもっと主要キャストとして全面で活躍していた違うかもしれないが、いなかった。東日本大震災のトラウマ感という設定は仕方ないが、トラウマを持っているので、陰キャなのは、全然意外性がない。それが低視聴率にもつながっているのだろう。言ってみれば今回の朝ドラは、清原果那の無駄遣いだった気がする。彼女の独特の雰囲気、存在感を活かせるのは、「現代モノ」でなく確実に「女の一代記」だったはずで、彼女の一ファンとして、「おかえりモネ」以外の作品での彼女主演の朝ドラを観てみたかったなと、残念な気持ちで一杯だったりしている。