「他責の人」という人種がいる。文字通り何か問題が発生した時、その原因を自分以外の何かに求めるタイプの人間だ。オラより5歳少し年上の50代前半の20年来の知人が、まさに「他責の人」化したのだが、仮に彼をS氏としたい。S氏は、アメリカの大学、大学院の修士、博士で情報工学を10年以上で学び、30代半ばで日本に帰国。情報解析の技術者として、国立大学系列の病院や研究所でもキャリアを重ね、国際会議にも数多く出席しており、ある種のグローバルエリートとも言えた。S氏と知り合ったのは偶然で20代後半で大阪で働いていたときで彼も当時大阪在住で、当時かなり趣味だったポーカー関連のイベントで知り合ったのがきっかけだった。S氏はアメリカのポーカー大会でも複数回インザマネーに入る実力者で、数百万円の大会で優勝したこともあったらしい。確かにポーカースタイルはアグレッシブで、早めに飛ぶことはあるんだけど、勢いにのると無双なかけひきで、当時は理系的な頭の良さを感じさせるプレースタイルで、けっこう尊敬させられていた。
S氏とはオラが東京の職場に転職した後に、彼も東京の近所に引っ越してきたこともあり、けっこう頻繁(2、3か月に一度程度)にあっており、まずまずいい友達関係を続けていた。そんなS氏だが、数年前に40代後半で、某研究所をリストラされてから、一気に「他責の人」へと進化してしまった。年齢もあり失業後には希望の仕事が決まらず、一応専門職の派遣労働を繰り返していたのだが、多くが短期雇用に終わり、いつしか口から出る言葉は、自分以外の何かに原因を求める発言が中心になり、危険思考すら増え、完全なる「他責の人」と化したしまった。
さらに酔っぱらうと他責化がさらに進化して、ややこしい人間になってきた。他責思考は自責思考と比べ、当事者意識が低いため認識が浅く同じ失敗も多いのが大きな問題だ。だが一方で、一時的には重圧から逃れられ、その分ストレスは軽減されるのという心理的なメリットも少なくない。S氏もそのループに入り込んでしまったと最近深く感じさせられている。
多くの大企業が、構造改革を合言葉に、大幅なリストラを本格化させ、上場企業が募集した「早期・希望退職者」人数は、今年に入り既に昨年1年間の人数を大きく超えているという。企業変革は避けて通れないが、説得力の弱いリストラは、一時は乗り切れても、「他責の人」を大量に生み、自社だけでなく、業界、日本全体の活気までも奪う恐怖を、S氏を見ていて思う。S氏が今後いい職を見つけ再生する可能性もゼロではないが、かなり低い可能性だと感じているおり、これからどうS氏が進むのか、他人事だが不安感が大きい。そういえば考えてみると、映画や漫画で問題を起こすマッドサイエンティストの多くも、自分の功績を認めない企業や国への恨みを募らせた「他責の人」だったなとふと思い返し、無責任だがこのブログの締めとしたい。